恐怖の「刷り込み」クリーニング利用習慣

30代半ばの主婦、趣味は節約です。「ちょっと聞いて、こんな工夫でこんだけ節約できたわ!?」「おお 君って節約の天使だね!」と、今でこそ主人と、大いにこの話題で毎日盛り上がってはおりますが、以前はこうではありませんでした。

 

どこかにいっては何かを買い、何かにつけてはモノを買うことで解決をのぞむという、非常な物質主義の人間だったのです。

 

私がそんな娘だったのには、祖母が大きく影響していました。現在老人ホームで優雅に暮らす彼女は、正真正銘「昭和のお嬢さま」。詳しいことは本人も私の両親も教えてはくれないのですが、どうも大企業の重役が家族にいたようで、当時としては相当ハイクオリティにしてソフィスティケイテッドな、いわゆる「地方セレブ生活」を謳歌していたようなのです。

 

お祖父ちゃんと大恋愛の末、駆け落ち同然で結婚してからも、そのプチセレブぶりは相変わらず。近所の人には「世界がちがう」とドン引きされていたようです。まあ、きちんとした車道も通っていないような田舎に、シャネルだのディオールだのバレンシアガだの、そういう外国語を嬉々としてしゃべる若い奥さんが突如として現れたら、それは宇宙人扱いされても仕方がないかもしれません。

 

祖母はとにかく衣装持ちで、基本は和服でしたが相当質のいい洋服も持っていました。ですから日々のお洗濯に加え、ドライクリーニング店へのお願いが必要になってきます。毎週のお茶とお花のおけいこ後、和服洋服のクリーニングを頼むうち、家にお店が「御用聞き」にやってくるようになったのです。

 

サザエさん宅のお米屋さんではあるまいし、これは今考えれば「異常」だと思うのです。ですがセレブお婆ちゃんは全くかいせず、毎週の御用聞きに向けてセレブ服をためておくようになりました。お祖父ちゃんは地方の郷士としてうなっていましたし、細かいことを気にしなかったので、誰も変だとは言い出さなかったのでしょう。

 

やがてその息子(私の父です)にお嫁さんがきても、お婆ちゃんは変わりませんでした。「お嫁さん、毎週〇曜日にクリーニングさんがくるから、洗うものあったら預けて頂戴ね。」若い母は従順に従い、たまに洗いにくいものがあると素直におばあちゃんに預けたのです。これが、私が成人するまで延々と、習慣として残りました。

 

さて、この異常な習慣を普通と思っていた平凡孫の私は、一人暮らしになって困ったものです。ウールなどの冬物はクリーニングに出すべし、と刷り込まれていたので、早速近所の店に持っていくと…た、た、高い!!一着でも高いのに、複数点お願いなんてとてもできない金額でした。

 

そこで初めて、ドラッグストアでウールやお洒落着専用洗剤を見て回り、自力で「ていねい手洗い」に接する機会が始まったのです。必然、新しい服を購入する際には、自宅で洗濯が可能かどうかが大きなポイントになりました。今まで通りにデザインだけでホイホイ選ぶような、そんな浅はかなまねはもうできません。

 

セレブお婆ちゃんも悪気があってしたことでは全くないのですが、平凡な孫にとってはかなりカルチャーショックとなる、クリーニングの一件でした。